大元神楽

土地の神様に捧げ、神がかりをおこす

桜江町には、国の重要無形民族文化財に指定されている大元神楽があります。
大元神楽は古くから島根県の西部に広くあった大元信仰に由来し石見神楽の原型とされています。
一種の農耕神的なものとして村々に祀られる集落の神「大元神」を祀って行う式年神楽(ところにより4年、5年、7年に一度)で、大元神楽特有の演目や石見神楽と同様な演目があり、ゆったりとした六調子で舞います。
氏子の舞だけではなく、神社の神職さん達によって舞われる神事舞が受け継がれており、この中でも「託舞」と呼ばれる神がかり託宣の古儀を伝承されている事が一般の神楽に見られない大きな特徴です。
伝統のある神楽ですが、それぞれの土地の神様に捧げられる神楽の性格上、その地を離れて演ずることは出来ません。そのため、古くから伝わる神楽でありながら、他の地域の人にはそれ程知られていないのが残念です。
江津市では桜江町小田地区と川平町で7年に1度、桜江町市山地区では6年に1度大元神楽が行われます。

主要演目

大元神楽は、神職による神事舞があります。
ここでは、石見神楽ではみられない大元神楽独特の演目を紹介いたします。

太鼓口(どうのくち)

大元神楽太鼓や笛、鉦(かね)などの囃子方だけで演じられる神楽で、最初の頃はおごそかに、中頃は優雅に、後段は華やかに演奏されます。囃子方から神様に捧げるもので、全ての神楽囃子が凝縮しています。

御座(ござ)

大元神楽御座は神様の座のことで、この舞いで使われる「ゴザ」にかけられています。舞い手は、半畳のゴザと鈴を持って舞いますが、後半の「とびの段」では、ゴザを前後しながらその上を何十回も飛び続けます。

天蓋(てんがい)

大元神楽神殿に下げられた九つの天蓋を三人の引き手が掛け歌に合わせてあやつるもので、人の舞ではなく、その場に下り立った神様が舞っているように見える演目です。神楽を楽しんでいる神様が私たちに見せてくれている舞かもしれません。

綱貫(つなぬき)

大元神楽藁蛇(託綱)が舞殿に現れます。純白の衣装を着けた神職の中に、神懸りの役を担う託太夫が加わり、その中で揉まれます。ワラ蛇は舞殿の元山、端山を激しく回ります。舞いが終わると、藁蛇は天蓋に吊り上げられます。

六所舞(ろくしょまい)

大元神楽神職全員と託太夫が、大幣を先頭に舞うのが六所舞です。囃子方と神歌を掛け合いながら、舞殿の大元さまの方向とその他の神様の方向を拝してゆきます。かなり激しい舞いで神歌を歌いながら舞殿を廻るうちに託太夫が「神がかり」する場合もあります。

石見神楽について